「ああ、気持ちいいな」
ここは是政橋の近く。 多摩川の土手上を自転車で進んでいると、心の中で呟いてしまう。開放感に包まれると、そんな当たり前な言葉しか浮かんで来ないものだ。
遡ること70年近く昔、父親が奮発して買い与えてくれたのが子供用自転車だった。東京都内から転居してきたばかりの小学3年生にも、この辺りの道路状況なら安全と考えたのだろう。そんなことを思い出しながら、穏やかな気分で、きょうもゆっくりとペダルを回す。
両岸の樹木や土手脇のさまざまな草花、そして遠望できる富士山や多摩丘陵の色合いも、日々変化しているように目に映る。ここまで来た道を、さあ、もう少し進もう。